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カラートーク 塗装の話

会員コラム 文 : スガイ塗料商事株式会社 遠藤 和幸 2012年8月

「カラートーク」とお題をいただいた以上、私は塗料を扱う職に就いている立場なので、塗料の話を踏まえたいと思います。

私がこの塗料業界に入り感じる事は「やはり白色(白っぽい色)は人気色」ということ。まあ、白色に限らず、黒っぽい色といったいわゆる「無彩色系」が塗料出荷色として非常に多いと思います。この色彩思考は日本における自動車の人気色が、白や黒といったところにも強く感じ取れます。(諸外国では白い車を好まない国も意外と多い)
これには、白を神聖視するという文化的な要因も多く関わりが有るとの事。

一般的に、日本人は色を使うのが苦手と言われていますが、確かに無難な白系や黒系を選ぶ割合が多いと思います。特に室内で使用される塗料(壁面)は白で統一されるケースが多くみられます。アクセントはあくまでも小物で付けるという感じに。
これは清潔好きな日本人のイメージに合う色彩思考だと思いますし、私自身も違和感を感じたことはありませんでした。

そんな折、あるリビング雑誌で「日本の部屋は白い箱」という表現を目にしました。
日本人は色を選べなくて皆同じような部屋に住んでいるということが記載されていたと思います。まあ実際は別としても、そう言われてしまえば反論出来ない部分も有るなと感じてしまいました。塗料(色)を扱う者としてはちょっとだけ“せつない”内容です。
しかしながら、私も色選びが苦手で「白い箱」に住む一人に変わり有りませんでしたので、悔しさを活力に我が家にも色を(なるべく大きく)取り入れてみようとチャレンジしました。恥ずかしながら奮闘の成果を少しだけご紹介させていただきたいと思います。

今回、どのような色を選ぶか考えた際、日本人が昔から馴染みの深い、中彩度・中〜低明度の色から選びました。(灰桜や若草色といった日本の伝統色に多く使われた色)

※玄関ホール
家の顔ということで、妻と議論を交わした結果「臙脂(えんじ)色」にしました。

コンセプトは「飾りが映える壁」
来客の方が最初に入る場所なので、ちょっとインパクトを出すのが狙い。
中央に見えるのは古いアジアテイストな皿が入った額です。


臙脂色にしたら、飾るものもアジア系にしたくなり、私の独断で購入してしまった物です。妻には購入した是非を厳しく問われました・・・。が、しかし、専用のスポットライトまで付けてしまいました。(笑)
次の課題は、変に浮いた感じになってしまった白い下駄箱をどうにかしないと・・・

※寝室です
壁一面を「消炭色(けしずみ)色」にしました

「落ち着くスペース」がコンセプト。
この壁には動きを持たせるため、黄色い大小模様がデザインされています。

今回カラーリフォームをして、私自身感じたことは大きく2つ有ります。
ひとつは白色のみの空間というのは案外、居心地が良いものではないということ。
玄関もそうですが、今のほうがよっぽど自然に感じるから不思議です。あれやこれやと装飾する物にもこだわりが出てくるのは楽しい体験でした。
日本人には色や空間を楽しむ感覚が根強く残っているのですね、きっと。

それと女性の感性には敵わないということ。実は玄関も寝室も最終的に色を決定したのは妻です。私はただただ、「これは?あれは?」と聞いていただけ(笑)
日頃女性の方が、服装や化粧等、色に関わる機会が多いから感性が洗練されているなと、しみじみ実感しました。

まあ、しかし、今後は私も妻に負けぬよう、どんどん色に触れて感性を伸ばしていきたいと思います。まずは黒やグレー系が多くなりがちだった服装から変えていこうと決心し現在私服を大規模改装中です。
一番最近では、今まで身に付けたことがなかった淡いピンクのシャツを購入しました。(選んだのは妻ですが・・・。)

 

執筆者紹介

mic賛助会員
スガイ塗料商事株式会社
遠藤 和幸
2002年、スガイ塗料商事株式会社入社 生活と色彩の関係性を現場の中で探究しているカラーコーディネーター。

 

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